アホな実験:キンカンをふっくら煮るにはどうすればよいか?
 実験の動機:最近、何人かの人から「キンカンの砂糖煮」を食べさせていただいた。キンカンの実がふっくら柔らかく炊けているのから、結構皺くちゃで硬いものまでさまざまであった。一体その差はどこから生じるのか?という疑問から、いろんな人に聞いてみると、キンカンに刃物で切り目を入れたり、爪楊枝などで穴を開けるとふっくら仕上がることは判ったが、それでは穴を幾つぐらい開けたら良いのか、意見は様々で、やれ60穴、30穴、10穴、いや数穴と、人によってさまざまな答えであった。よって、キンカンをふっくら柔らかく形よく煮るには、穴を幾つぐらい開ければよいかを実験により確かめることにした。
 実験の方法
  キンカンと群分け:自宅の木から採取した食べ頃のキンカンの実(9〜13g)を水洗、乾燥後、1群20個で各群の実の大きさがほぼ均等になるように計7群を作った。各群の重量はほぼ200g前後であった。
 
 穴を開ける方法と群分け:径1.60x90mmの家具装飾品針に木綿糸を通し、実の柄の部分から頂点に向け針を通し穴を2個開け糸を通した(2穴)。0群を除く1〜6群全ては、この方法で20個の実を数珠つなぎにし群分けした。I群は2穴、II群はさらに実の赤道から針を反対側に通し4穴とした。同様にして、III群6穴、VI群8穴、V群10穴、VI群は12穴を実の中心を通るように針を通し開けた。
 
 炊き方:圧力鍋に各群のキンカンを入れ、水1.5Lを入れ沸騰させる。これに上白糖800g、塩1つまみを加え6分間加圧沸騰後、自然に冷まし減圧し、水分が実とひたひたになるまで蓋を開け弱火で煮詰めた。
 結果:0穴では明らかに強くシワがより、噛んでも硬く不味い。2穴では実はかなりふっくらするが、なおシワは多い。4穴以上になると実はさらにふっくらし、シワも少なく実も柔らかくなる。6穴以上ではほぼ差はなくなった(写真の通り、各群必ずしも実が20個あるとは限らないが、数珠繋ぎになった実を糸から抜くときにひどく破れたり、すでに鍋の中で壊れたり、不明なものは除いた)。  

 0穴  2穴  4穴
6穴  8穴  10穴 
 結論と考察:穴の太さ、深さも大きく影響すると思われるが、今回の成績では最低6穴開ければ、ほぼふっくらとや柔らかく仕上がると考えられた。 またシワや硬さは砂糖による浸透圧に関係し、穴から染み込んだ砂糖により実の中と外の浸透圧差がなくなるほどふっくらと柔らかく仕上がる。一方、砂糖液が滲み込む適当な穴がないと、高い外部の浸透圧により水分は実の表皮から外部へ滲みだし、表皮や果肉が固くなると考えられた。要は砂糖水が十分滲み込むような適当な穴があれば良いということ。
 12穴