大野・西山緑道、東大池公園、大野第3,4公園付近の鳥
   ー大阪狭山市ー
  私は大阪狭山市大野台に住んでいるが、過去数年間、雨さえ降らなければ、真夏を除いて週1〜4回のペースで、時刻を問わず暇を見ては、直ぐ近くの大野・西山緑道(以下緑道)、東大池公園、さらに緑道の東に隣接する大野第3,4公園を、散歩がてらにカメラを持って、四季折々の鳥の動向、自然の変化を楽しみ、その折々に撮った鳥、虫、花等の写真を Fecebook や HP に掲載してきた。大野第3,第4公園は逆方向なので毎回は行かないが、両公園に隣接した2つの用水池には、冬になると種々のカモが入るので時々覗きに行く。
  上の写真は、大野台西端の陶器山の尾根を通る天野街道から、東側に広がる大野台南部の様子を撮ったもので、バックの山並みは左から生駒山、中央が信貴山、やや右の二上山から葛城山へと続く、いわゆる生駒・信貴・葛城山系で、さらに山並みは金剛山・和泉山系へと続き、大阪府の東と南の障壁を成す。ちなみに山の向こうは大和平野だ。
 中央付近の東西に位置する三つの小山の頂きには、送電線を支える高い鉄塔が建ち、送電線直下の幅わずかに30mぐらいの細長い建設制限地が緑道として利用されている。
 右手奥のレンガ色の大きな建物は近畿大医学部付属病院で、見ずらいがその手前に東大池公園が位置する。第3、第4公園は一番奥の鉄塔の更に東に位置し見えない。私が探鳥がてらに散歩するのは、もっぱら緑道と東大池周辺で、往復わずか3km足らずの道程だ。
   送電線の下にある緑道。東正面入り口付近         緑道内に延びる歩道
 緑道の上空に張られた高圧線は、少し風が強いと、ヒュルヒュル、ブーンと不気味な低い唸り声を発するが、鳥達は余り気にしていないようだ。緑道の垣根は場所により種類が異なり、園内にはナンキンハゼ、ネズミモチ、トウネズミモチ、クロガネモチ、ウバメカシ、シラカシ、クスノキ、アキ二レ、トウカエデ、ヤマモモ、サクラ、カエデ、クマノミズキ、ヤマハギ、ツバキ等々、鳥が好む実や花が咲く種々の木が沢山植えられたり、自生しており、四季折々、鳥が良く集まって来る。しかし残念ながらサクラやウメは近年市内で猛威を振るう特定外来種:クビアカツヤカミキリにより、ほぼ全滅してしまった。
 鉄塔が建つ3つの小山はクス、松、ドングリ、カシ、カキ等の大木や種々の雑木、ハギ、ススキ等の雑草が生い茂り、常在する鳥達や渡り鳥の格好の餌場、休息場、繁殖場である。まれにハイタカ等の大型猛禽類も姿を現すことがある。
 緑道周囲の住宅街にはイソヒヨドリが多い。屋根や電柱の天辺で、早朝、きれいな可愛い声で鳴いているの大抵この鳥だ。ボクの大雑把な観察では、少なくとも約4〜500m四方に1番は居るのではないかと思われる。

  こんな細長い狭い緑道や公園にも、四季折々、特に渡り鳥が移動する秋、春には色々な鳥が立ち寄り、また冬鳥がやって来て目を楽しませてくれる。
 四季を通じて見られるいわゆる留鳥は、ハシブトガラス、ハシボソガラス、キジバト、ドバト、ヒヨドリ、イソヒヨドリ、メジロ、エナガ、シジュウガラ、コガラ、スズメ、ムクドリ、モズ、イソヒヨドリ、ウグイス、ヒバリ、セキレイ、ハクセキレイ、キセキレイ、カワラヒワ、オオバン、バン、カイツブリ、大・中・小サギ、ゴイサギ、カワセミなどで、彼らは緑道や公園の常連さんだ。
 3月早春にはツグミ、シロハラ、ジョウビタキなどの冬鳥がまだ居残り、時にヒレンジャク・キレンジャクの群れがやって来、ウグイスが鳴き始める。
   5月になると、大野周辺を繁殖期のホトトギスが鳴きながら飛び交うことがある。
 5,6月は鳥の繁殖期で、緑道や公園、電信柱、近隣の家や森で常連の鳥達が巣を作り、6月に入るとそれらの若鳥が巣立ちにぎやかさが増す。5月初旬には、まれにはサンコウチョウなどの夏鳥が、旅の疲れを癒すべく数日立ち寄ることもある。緑道内の営巣は、シジュウガラ、エナガ、モズ、キジバト、ハシブトカラスで確認した。
 7−9月、この辺りには夏鳥は来ず、常連の鳥が時折顔を見せる程度で最も鳥が少なく暑い時期なので、余り探鳥にも行かない。
 10月半ばを過ぎアキ二レが実る頃、カワラヒワ、アトリが群を成してやってくる。さらにキビタキ、コサメビタキ、センダイムシクイ、メボソムシクイ時にはキクイタダキなど、渡り途中の鳥が姿を見せ、数日間羽を休めてゆく。メジロ、エナガ、シジュウガラ、コガラ、ヤマガラ等の混群が餌を求めて頻繁に緑道を移動する。
 11月末には移動中のビンズイが渡り途中に顔を見せ、ジョウビタキ、ツグミ、シロハラなどの常連の冬鳥がやって来る。
 12-2月、真冬になると、東大池周囲の径は、アオジ、クロジ、ツグミ、シロハラ、時にはトラツグミ、アカハラなどもやって来て賑やかになる。
南側の径からみた東大池。右上に一番東の鉄塔が見える
 近大医学部の前に位置する東大池公園は、運動場、子供の遊び場、休憩所、公衆トイレ等が整ったちょっとした公園で、市民や病院関係者の憩いの場となっている。私が行くのは病院前の長年干上がったことがない東大池周囲だけだが、池には水草や、タニシ、小エビ、小魚が豊富で、一年を通じサギ類、カモ類、バン、オオバン、カイツブリ、キセキレイ、カワセミ等の水鳥の絶好の餌場や休息の場となっている。さらに春、夏には池周辺には多くの虫が発生し、それを狙ってツバメが飛び交い、秋には池周辺の林で渡り途中のコサメビタキ、キビタキ、センダイムシクイ、メボソムシクイ、ビンズイ等が休息のため数日滞在する。冬にはハシビロガモ、キンクロハジロ、ホシハジロ、マガモなどが東大池に集まって来る。さらに第3、4公園に隣接する用水池には前出のカモの他、ヨシガモ、コガモがやってくる。
 池周辺の径は枯れ葉や木の実が積る自然道で、私の一番好きな径だ。毎年冬になると、アオジ、ビンズイ、ツグミ、時にはクロツグミ等が越冬し、茂みから径に出てきて餌を漁る。早春にはシメやイカルも落下したシイやドングリの実を食べにやってくる。
 池の西側の雑草混じりの芝生広場には、ムクドリ、ツグミ、ハクセキレイ、ビンズイなどが良く餌を食んでいる。大学の屋上や上空では、時折チョウゲンボウがカラスに追いかけられているのを見かける。
東大池東側の径  東大池南側の径 
 東大池西側の径 東大池北側の径
 私が過去数年間、真夏を除いて週1〜3日、大野・西山緑道および東大池公園付近の探鳥で確認した鳥は下の表に示したように59種であるが、これは私一人で散歩中に確認し、写真に撮った種類だ。見落としたり、確認できなかった鳥もあるから、実際にはもっと多くの種類の鳥が訪れてくれていたに違いない。

 ちなみに、近くの狭山池公園では過去に82種、広大な河内の自然林を取り込んだ河内長野市の錦織公園では53種、さらに堺の大泉緑地で90種、長居公園で142数種、大阪城公園で174種、鶴見緑地で62種が記録されている。これらの公園は地域的にほぼ同じような渡り鳥のコース下にあると考えられ、四季折々に種々の鳥の重要な休息場となり、冬鳥の居場所となる。加えてこれらの公園は、野鳥の会会員や多くのベテラン愛鳥家が、年間を通じくまなく観察していおり、鳥が見つかる確率は非常に高いと思われる。

 こうしてみると、大野台周辺にやってくる鳥の種類は、近隣都市の大公園のそれと比べても決して少なくはない。特に隣接する河内の自然林をふんだんに取り入れた広大な錦織公園を上回る数が見られたのは実に驚くべきことだ。もっとも錦織公園の主な目的は、河内の自然林を保存することにあり、他の公園とは少し趣旨が異なる。したがって他の公園と比べると餌になる草木は散在し、森が深く広大で、鳥を探すのは非常に難しい。その結果の表れではないかと推察される。
 大阪城公園や長居公園で野鳥が多いのは、公園も大きく、餌になる草木も多く、比較的見易く、愛鳥家の訪問も多いからだろう。特に大阪城公園を訪れる野鳥愛好家の数は非常に多い。これらの大公園と比べ大泉緑地が意外に鳥が少ないのは不思議だ。ここは毎日多くの愛鳥家が見回っている。確かな理由は不明だが、一つに枝が込み合った大木が多く、鳥が見難いことが考えられる。その他、ひょっとすると他と比べ鳥の餌になる樹木の種類も、案外少ないのかも知れない(例えば大野・西山緑道と比べると、その密度は圧倒的に少ない)。また近隣に多くの御陵や公園、田畑、溜池等が点在し、鳥が餌を求めて拡散しやすいことも考えられる。鶴見緑地で意外に鳥が少ないのも、やはり餌となる木が少ないからではないかと推察される。

 以上に述べたように、自然林や公園で見られる鳥の数に重要な影響を及ぼす要因として、以下のことが考えられる
 1. 鳥の好む餌が豊富で、飲水や水浴をする水場がある。
 2. 安全な鳥の隠れ家、塒(ねぐら)がある。
 3. 鳥が見易い(障害物がない)。
 4. 鳥を見る確かな眼が多い(素人ではなく、鳥を良く知っている愛鳥家の眼)。
 5. 同じ渡りのコースに入っているか否か(コースで鳥の種類は異なる)。
   6. 周囲の状況(環境)。
   7.   鳥の性質:神経質(臆病)か、そうでないか。

 このように考えると、大野・西山緑道および東大池公園は、4を除き全ての条件を満たしており、周辺地域にも自然が残され、また住宅街にも鳥が好む草木が植えられている庭が多数点在するなど、緑道・公園自体は狭くても、周辺の環境も鳥が集まる条件に適っている。さらに愛鳥家が増え、観察の機会が増えると、もっと多くの鳥が見つかる可能性が十分残されている。

 一方、堺や大阪市内の各公園では、都会の中にありながら、見られた鳥の種類は非常に多い。これは言うまでもなく、これらの公園は当初から鳥が集まるように計画・設計されており、鳥が好む餌となる草木を多く植え、また樹木もよく手入れされ観察しやすいことが考えられる。
 さらに大阪城公園で鳥の種類が群を抜いて多いのは、上記に加え、圧倒的な愛鳥家の多さと深く関係していると思われる。鳥を知る人の眼が増えれば、それだけ詳しく見ることができ、見つかる鳥も増えるのは当然のことだろう。

 鳥には一生をその地方で過ごす留鳥(例:カラス、スズメなど)、季節によってやって来る鳥(冬鳥、夏鳥)、渡りの移動中で一時的に休息にくる鳥(渡り鳥)などがある。これらの鳥は、地域により非常に
異なって来るが、ここに挙げた公園ではほぼ同一条件だと思われる。またいずれの公園も夏鳥は少ないと思われる。

 今年の3月初旬、陶器山大通りのクロガネモチの並木道に、例年のヒヨドリの大群に加え、さらに約200羽にも及ぶヒレンジャク、キレンジャクの大群がやって来た。鳥の糞で近隣住民は大変だったらしいが、レンジャクは関西では比較的珍しい鳥である。しかし餌さえあれば、遠く北国からでも、こんなに多数のレンジャクが集まって来るのだ。

 とまれ、こうした鳥が集まる緑道や公園が身近にあると言うことは、一市民として非常に嬉しく誇らしく思うが、これは言うまでもなく市関係者各位の高い知識と見識の賜物であり、深く感謝する。

      大野・西山緑道、東大池公園、第3,4公園付近で見られた鳥60種とその画像
   
    (鳥の名前をクリックすると画像が出ます:但し必ずしも緑道内で撮影した鳥とは限りません)

主に見られる
     季節

 通年   スズメ     キジバト     コゲラ     ハクセキレイ  ウグイス
      ハシブトガラス ドバト      ヤマガラ    キセキレイ   ケリ
      ハシボソガラス メジロ      モズ      セグロセキレ  マガモ
      ヒヨドリ    シジュウガラ   ヒバリ     オオバン    カルガモ
       イソヒヨドリ   エナガ      ムクドリ    バン      カイツブリ

      ゴイサギ    アオサギ
      カワウ     チョウゲンボウ
      ダイサギ    カワラヒワ
      チュウサギ   イカル
      コサギ     シメ

 春      ヒレンジャク  サンコウチョウ
 3-5月   キレンジャク
      ツバメ
      コシアカツバメ
      ホトトギス

  夏
   6〜  8月

  秋
  9〜11月 アトリ     メボソムシクイ
        キビタキ    センダイシクイ
        キクイタダキ  ビンズイ
        コサメビタキ   
        ジョウビタキ 
  冬
 12〜  2月  ツグミ       クロジ        ハシビロガモ
        トラツグミ   コガモ
      シロハラ    キンクロハジロ
      アカハラ    ホシハジロ
                    アオジ               ヨシガモ