ペヘレイ    
  今朝、メダカの水槽を掃除しながらふと昔の事を思い出した。
 それはペヘレイという名前の魚のことだ。
 山口に居た頃、冬の釣りといえばもっぱらワカサギ釣りだった。山口県は西日本で温暖だというイメージがあるが、それは瀬戸内海沿岸部だけのことで、少し内部に入るとむしろ山陰気候で冬は結構寒く底冷えする。例えば新幹線の小郡は瀬戸内気候に属し冬でも晴天が多く温かいが、少し内陸側の山口市の空は何時もどんよりと雲で覆われている日が多く寒い。
 そのせいかどうかわ知らないが、美祢の豊田池はじめ、山口市近郊の銀鶏湖、宮野湖などのダム湖にはワカサギが繁殖して冬には結構よく釣れた。
 ある日のこと、ボクはワカサギの新天地を求めて宇部市の山側にある厚東川をせき止めて造った小野湖へ出かけた。他に誰も釣り人は居らず目的のワカサギも釣れなかったが、その時ワカサギの仕掛けに今まで見たこともない奇妙な20cmぐらいの小魚が数匹掛かった。 それはまるでメダカの親玉のような魚で、口と目が体の上の方に付き、やや背中がヘラベッタイ体型や背びれの付き具合もメダカによく似ていた。
 釣った魚は食べるというのがボクの流儀なので、いろいろ調べた後、少し不気味ではあったが天ぷらにして食べた。ところがこの魚、見かけによらず淡白で意外に美味しく大変驚いた。身は半透明の白身で、食感はサヨリやキスに近く、刺し身、天ぷらムニエルで食べるらしい。、
 色々調べた結果、この魚は「ペヘレイ」というアルゼンチン原産の魚であることが判った。「ペヘレイ」という名は、スペイン語の「 Pez del Rey:魚の王」に由来するらしく、アンデスのチチカカ湖にも生息しているそうだ。
 味をしめてその後も何度か行ったが、ついぞ釣れなかった。
 実はこの魚、1966年にアルゼンチンから神奈川県淡水養殖場に卵で輸入され、県内の湖沼、河川に放流されたのが最初らしい。その後丹沢湖や相模川に放流され、現在でも埼玉県、栃木県で養殖されているらしいく、1999年には霞ヶ浦で異常繁殖し一時は外来危惧種として心配されたが、現在は減少しているらしい。関東では霞ヶ関を初め相模川などで結構釣れるそうだが、僕の知る範囲では関西では未だかって見たとか釣ったとか聞いたこともない。
 どういう経緯で山口県まで来たのかわらないが、恐らく水産関係者が放流したのであろう。 和名は「ラプラタトウゴロウ」というらしいが、成魚は50cmにも達するとい
う。トウゴロウとは、この魚が日本産のトウゴロウイワシの一種であるかららしい。
 メダカと比較するのは所詮間違いかも知れないが、以来メダカを見るとボクは何時もペヘレイを思い出す。

 
参考:確かにその時釣ったペヘレイの写真を撮ったのだが、探しても判らなかった。
   「ペヘレイ」で検索すると、その写真が沢山見つかるから関心のある方はそれをご覧頂きたい。