タナゴの産卵  
  昨年の夏の終わりに、近所の田圃の傍を流れる溝から獲って来た稚魚、幼魚だったタナゴが水槽の中で成長し、6月に入るとオスの体色が鮮やかな虹色に輝き、鰭の端や尾が紅色に色付き(1)、同時に何匹かのメスの腹から産卵管が伸びだした(2)。産卵期が来たのだ。

 タナゴといってもいろいろ種類がある。オスは約5cmぐらいとまだ小さいが、メスの背びれの黒斑(2)、オスの腹びれの前縁が白い(1)ことから、タイリクバラタナゴと同定した。
   
 タナゴは産卵管をドブガイ等の貝の出水管に差し込み産卵する、ということは子供の頃から本を読んで知っていた。その頃にも何度かタナゴを飼っており、産卵管が糞のように長く伸びるのは知っていたが、ドブ貝を獲ってきて一緒に飼ったことはなかった。
 ♂(1)
 ♀(2)
 何とか産卵の瞬間を見たい。そしてタナゴを殖やしてみたい。早急にドブ貝を入手せねばならない。池に探しに行っても、そう簡単に獲れるものではない。

 いろいろ思案した結果、ネットで岡山の業者から購入することにした。Lサイズで1個300円。6個注文して3日後には宅急便で送られてきた。便利な世の中になったものだ。

 早速、LサイズとMサイズの2個を水槽に入れ、他は外の大きな水槽に入れてやった。するとすぐにタナゴ達はL貝に興味津々で、雌雄ともしきりに出水管を覗いている(3)。しかし手前のM貝には全く興味がない様子だ。やはり小さい貝では駄目なのか。

 そのうちタナゴ達は次第に興奮し、産卵・放精行動を見せ始めた。
 4は産卵管を貝の出水管に入れ放卵の瞬間であり、傍にオスが寄り添っている。
 5はオスが放精を行った瞬間である。小さな口を一杯に開き、感無量といった顔つきのオスを3匹のメスが見守っている。

 このような産卵行動は6月7日から15日にかけてピークとなりその後一時消失した。

 ところが15日から、タナゴ達はL貝には見向きもせずM貝に興味の矛先を代え、しきりにアタックを始めた(6)。そして再び狂ったように産卵行動が始まった。

 一体これはどうしたことだろう。どうして興味の対象が変わるのか?
 これは面白いテーマだ。
 今までの様子からすると、どうも貝がタナゴを引きつける誘引物質を出水管から放出しているように思われる。

 おそらくこんな疑問はすでに解決されているはずだ。一度調べてみる価値はある。
(3) 
左♂と右♀が寄り添い、メスが出水管に産卵管を挿入すると同時に♂が寄り添い精子を降りかける(4)
(5)
 6