探鳥あれこれ
                              2020.4.1
 
 
    これまでに、シンガポール、タイ、台湾等の国々へ何度か探鳥に行ったが、それらの国々でも、ここ数年で愛鳥家が急激に増えてきたのに驚く。シンガポールなど日本同様、女性カメラマンも結構多い。以前に行った時には探鳥をする人など見たこともなかった。その理由としては、日本と同様、経済的な余裕とカメラの進歩があると思われる。とくにフィルム時代からデジタル時代になり、現像が非常に簡単に安価、誰もができるようになったことは大きい。
 
  一口に愛鳥家といってもいろいろだ。鳥を飼って姿や鳴き声を楽しむ人。特に東南アジアでは昔からのこの風習が未だに根強く残っており、街を歩くとよく軒先に鳥籠が吊るしてあるし、公園等で飼い鳥の歌合戦が行われるほどだ。実際、ベトナムのハノイの街の広場で、人々が自慢のメジロを持ちより、歌合戦をしているのを見たことがある。

 欧米では、ただ静かに眼で鳥を見て楽しむ人、双眼鏡で覗く人が多いように思われる。実際、ボクは日本各地で、単に鳥を見るために旅行している西洋人の鳥愛好家に何度か出会っている。せいぜい望遠鏡で見るだけで、何故か写真は撮らない。

現在は情報時代、珍しい鳥が何処かに現れると、たちまちその噂は全国に広が
り、翌日には大勢のカメラマンが全国から集まって来るという状況だ。ボクも何度かその恩恵に浴し、ギンムクドリ、ユキホオジロ、ヤイロチョウ、タカサゴクロサギ等の珍鳥の写真を関西で撮ることができたが、中にはマナーの悪い人が居て、仲間同士や地地主と問題を起こしている。最近はそう言う騒動が嫌で滅多に行かなくなった。

ボクの場合は、カメラで撮りたい方だが、その中でもいろいろな楽しみ方があ
る。例えば単純に色々な種類を撮りたい、飛んで居る鳥を撮りたい、鳥の生態写真を撮りたい、芸術的な鳥の写真を撮りたい・・・等々。

  ボクの場合、初めはただガムシャラに撮って楽しんでいたが、次に色々な鳥を撮りたいと思うようになり、国内を東から西まで渡り歩き、さらに国内では滅多に見られぬ鳥をタイ、シンガポール、台湾まで追い掛けた。

 一通り上手く撮れるようになると、自分が良いと思った写真が、皆図鑑に出てくるような静止ポーズの写真で、鳥に表情が乏しいというか、何か面白く無いのに気付くようになる。さらに、大きな口を開いて鳴いたり、餌を獲っていたり、水浴をしたり、喧嘩をしたり、子育てをしたり、♀鳥にアピールしたり、何か鳥に表情や動きがあり、鳥とバックのバランスの良い、いわば芸術的な写真が撮りたい、と思うようになる。鳥の種類もさることながら、鳥の姿とバックの調和が素敵な写真を撮りたいと思うようになる。しかし、これは言うべくしてなかなか難しい。その一瞬が撮れるのは多くの場合まぐれであり、狙って撮るのは至難の業であるが、バックを考え、それを見通して撮影できるのがプロと言われる人達だろう。しかし、素人でもたまにはまぐれでそういう写真が撮れる場合があるから止められないのである。

 鳥の撮影は、望遠カメラを三脚に据え行うのが普通である。高倍率にするとどうしても手ブレが入るからだ。しかし実際重たくて、これらをひっさげ歩き廻るわけにはゆかない。特に老人には重労働過ぎる。したがってボクは滅多に望遠レンズや三脚を使わず、もっぱら接写から2000mmの超望遠まで撮影可能な NikonのCOOLPIX P1000 を愛用し、ほとんど手持ちで撮影している。肘を木や柵に固定し、ASAを上げシャッタースピードを上げれば、近接から超望遠まで、何とか撮れる。そうしなければ、素早い鳥の動きに合わされない。ただ一カ所に粘って長時間鳥のお出ましを待つ時には三脚を使う。

 前にFacebookでも書いたが、カメラは銃と似た所がある。目的に照準を合わせ、1秒10コマぐらいの連写で撮ると、あたかも機関銃で狙い撃ちをしているような快感がある。ましてや、見事に命中して素晴らしい写真が撮れた時の喜びは、獲物を撃ち落とした気持ちと一緒だ。だから主に男性が好んでやるのである。

最近はビデオカメラで撮る人も増えてきた。望遠カメラより安価で望遠が効き、動きや音が入り、良い画面を切り出すことができ、写真よりむしろ撮るのも易しいし、後でテレビで皆で楽しむこともできる、という利点もある。ボクも最近それを考えている。
 
 一人で探鳥へ行ってもなかなか目的の鳥に出会あえず、無駄足を踏むことも多
い。特に高齢になるほど、宿の予約や切符の手配などが苦になり、最近では、専門の会社が企画する「探鳥ツアー」をよく利用している。専門のガイドが適切に効率よく計画したコースを少人数で巡るのだが、多少高くつくが、ただ付いて行きさえすればよいので、非常に気楽で便利である。国内は兎も角、外国へはこれなくしては、おいそれと行けるものではない。ボクはシンガポールへは一人で行った。シンガポールは英語が通じ、国も小さく、探鳥の場も判っており、公共の交通網やタクシーを使って探鳥が出来る、しかしタイ、台湾等へは、単なる観光なら兎も角、探鳥目的では一人で行くのは到底無理である。

日本内地でさえ、探鳥の一人旅は中々難しい。先ず何処へ行けば目的の鳥と出会えるかが判らない。最近沢山の探鳥に関するの本が出版されており、そのほとんどを購入して読んでいるが、それでも難しい。

これまで探鳥で一人旅したのは、宮古島・石垣島・西表島、隠岐の島、金沢・乗鞍山、戸隠。特に車の一人旅はボクの憧れで、あちこち探鳥へ行きたいとずっと思い、何度も計画したが、未だに実行できずにいる。もうタイムリミットぎりぎりなので、今年の夏こそ憧れの北海道で、車中泊やテント泊で、気軽な一人旅を果たしたいと思っている。