第1回  天満橋八軒家船着場から浅香
2010年11月16日 約19km 7時間
 熊野街道の起点は天満橋八軒家だ。京から淀川を船で下りこの地で上陸した。江戸時代には、京・大阪間を結ぶ三十石船で賑わい、八軒の船宿があったことから「八軒家」の地名が着いたと言われている。
 天満橋より船着場を眺め(1,2)熊野街道踏破の決意を新たにする。 
 永田屋昆布店の八軒家船着場跡の石碑(3)を見て西に進むとすぐ御祓(おはらい)筋交差点がある。その角に平成2年に建てられた「熊野かいどう」の道標(4)がある。
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   これより一筋西の骨屋町筋を左折してすぐのビルの間に、ひっそりと座摩(きかすり)神社が祀られている(5,6)。ここは熊野九十九王子**の第一社、窪津(別名:渡辺)王子跡で、当時はここで旅の安全を祈願した。 6の賽銭箱のように見える金枠の下には、神功皇后が新羅より御帰途の折りに休息されたという石がある。 
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注:文献では(ざま)と読んでいるが、神社の説明板には(きかすり)となっていた。
**注:王子とは京都から熊野三山に至るまでの間、難行苦行の信仰の道をつなぐために設けられた神社で、熊野権現の御子神を祀る分社社であり、九十九の王子があると言われている(九十九というのは実数ではなく多いという意味、百が熊野三山を指すという)。
 御祓筋を一気に南に進み、阪神高速道路の高架をくぐると右に南大江公園がある。公園奥の南西の角には朝日神社跡がある(7)。ここは坂口王子伝承の地であるが現在は狸大明神が鎮座ましす(8)。 
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 ここより道を東にとり谷町筋を横切り1ブロック東側の小道へ入る。この辺り少しわかりにくいが熊野街道の道標がみられる(9)。この道沿いにはウダツの上がった少し古い家が点在しどことなく街道気分が漂っていた(10)。  
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 なお南下し谷町筋を渡り縁結びの神さん愛染堂(勝鬘院)に参拝(11)。金堂は府の指定文化財である(12)。 
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  再び谷町筋を渡り四天王寺へ向かう。裏門から入り広い境内を巡って南門前の熊野権現礼拝石から熊野方向に旅の安全を祈願する(13,14)。
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  南門を出て道を渡るとすぐに超願寺だ。境内には竹本義太夫の墓がある(15)。さらにすぐ近くの庚申堂(16)を経て昼過ぎに天王寺駅到着。休まず阿倍野筋を南下する。  
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  あべの筋を進むとやがて道の右手に安倍王子神社が見えてくる。境内には見事な大楠が茂り、大阪市内にあるとは思えぬなかなか立派な神社である(17,18,19)。戦火から難を免れたのだろうか。熊野詣の盛んな平安朝時代には、九十九王子の第二王子社として殷賑を極めたらしい。




 さらに南下すると通りの左手に北畠顕家公所縁の公園がある(20)。この墓は江戸時代太平記等の伝承により、顕家公終焉の地であるこの地に建てられたものらしい。  
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  次いで万代池へ向かう。万代池は上町台地の侵食谷をせき止めて作られたという古い池で、現在は桜の名所となっている。聖徳太子が曼荼羅教をあげて池野に住む魔物を収めたという言い伝えから「まんだら」が転じて付けられた名前らしい(21、22)。
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  逆光の噴水が美しいシルエットを描き出していた(23)。
 池の真ん中を渡る橋の辺りに古池龍王が祀られていた(24)。  
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  次いで住吉大社へ。
 阪堺電車と南海本線の交差点付近を通過し、途中チョトいい感じの分かれ道に新しい街道の案内板が立っていた(25)。
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  街道筋を少し行くと大楠が茂る住吉大社の裏門に達する(26)。摂津の国の一宮、住吉神社の総本山であるこの大社は、お祓い、航海安全、和歌、農耕の神様だ。ご本殿(27)、摂社、末社等多くの建物が建つ(28)。 反橋(29)を渡って表門に抜け、おはらい橋を渡り(30)、さらに南下する。  
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  ここから大和川まではほぼ直線的で、途中に万葉集にでてくる霰(あられ)松原(31,32)がある。この地は奈良・平安時代は海に沿ったすばらしい松原で「岸辺の道」ともよばれ、室町後期からは「紀州街道」と呼ばれていた。

   その後街道は安立本道り商店街となり大和川に至る。商店街入り口付近に古い民家が残っていた(33) 

空腹を感じたので商店街のちょっと感じの良いめし屋で昼食を摂ろうとしたが、満員のためスーパーでサンドイッチを購入し食べながら歩く。

 途中和歌の石碑が建つお寺(34)など見ながらようやく大和川の堤に至る。 
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 上流に阪堺線(36)、下流に高速道路を見ながら(37) 大和橋を渡る(35)。
 最近大和川にはアユが帰って来たと報じられているが、水質は随分改善され、渕にコイが泳いでいるのが散見された。
 左岸を上流に向かい、阪堺線を超え、南海本線まで歩き(38)、午後4時浅香山駅で今日の行程を終了した。    
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  感想:
 
全体として道そのものは市内の雑踏が多く決して快適ではないが、意外に見所が多く結構時間もかかる。
 永年大阪に居ながら知らぬ所も多く非常に興味深かかった。
 途中空堀商店街辺り、また阿倍野松虫から万代池の間でも道に迷ったが、交通量の多い国道を避け裏道に入ると迷うことが多い。
 市内は何処でもコンビニがあり、食べ物、飲み物、その他緊急に必要な物もすぐに購入でき便利だ。
 ほとんど休まずに歩いたが、写真を撮る時に足を止めるので、それが休息の時間になっていたと思う。