トカラ列島平島の探鳥
  2017.4.21〜26日まで、鳥友の長田宣也氏、宮本一也氏とトカラ列島平島の探鳥をした。計画および段取りは全て長田氏にお任せした。
 4月21日(金)
神戸空港09:30発(SKY131)スカイマーク。鹿児島空港10:40着
平島へは鹿児島本港南埠頭23:00発(フェリーとしま)で行くため、その間レンタカーにて野間半島方面を探鳥する。
 アマサギ
 途中の田圃でアマサギを見つけ撮影。それから万之瀬川河口 にある吹上浜海浜公園に立ち寄った(上の地図の現在地)。ここはいかにも野鳥が多そうな公園で、河口に面して立派な野鳥観察の家、河口の鳥の観察用ハイドもあるほどだ。
 野鳥観察の家とその前に広がる万之瀬川河口
河口に作られたハイドと河口 
海辺に咲くルリハコベ 
 ところが、よほど運が悪かったのか、時期が悪かったのか、カラスやウグイスを除き全く鳥は見かけなかった。 
 この後、野間半島を右周りに一周した。ここでもほとんど鳥影は見られず観光ドライブとなった。
野間半島 
鹿児島港、向かいは桜島
  鹿児島本港南埠頭23:00発(フェリーとしま)にてトカラ列島の平島へ向かう。
 22日(土)
   トカラ(吐喝喇)列島は霧島火山帯に属する火山島で、屋久島から奄美大島間の海域に帯状に点在し北から口之島、中之島、臥蛇島、蛇小臥島、平島、諏訪之瀬島、悪石島、小島、子宝島、宝島上ノ根島、横当島で、有人7島、無人5島の合わせて12の島から成り、行政上は鹿児島県十島村に属している。
 5:45 口之島  6:08 イルカの群れ
 6:25  中ノ島 6:30  中ノ島
 カツオドリ
 7:30 諏訪之瀬島  7:38 諏訪之瀬島
 7:47   サクラツツジ 7:49   諏訪之瀬島
 8:04 野生ヤギ 8:20   座礁船
8:48  平島  8:54 平島
 平島はトカラ列島のほぼ中央部に位置し、公共交通機関は鹿児島から村営船週2便のフェリーに限られており、約250km、約9時間もかかる。鹿児島県でも知らぬ人が多いそうだ。島は南北1.5km、東西1km、周囲4.5kmの小島で、中央西側はやや平坦な地形となっており、そこに集落がある。その奥の北側には今は死火山の標高243mの御岳がそびえている。港は平時しようしている南の浜港、強い西風の時には東の浜港を使う。
 西から見た平島;手前南の浜港、坂道を上り詰めた左端に村落
   港には宿から軽四が迎えに来てくれた。
 集落は港から急坂を約1.2kmの島の西側中腹にあり、小中学校、診療所、公民館、神社、寺、民家、発電所などが集まり、ここに民宿が3軒ある。
 島の世帯数は38世帯(2015.12.31現在)、主にも漁業、牧畜、農業で生計を立て、民宿は3件あるが店や土産物屋は全くなく、わずかに飲料水の自販機が数か所あるに過ぎない。しかし、水と電機は島内で賄っている。
 民宿大峰荘に荷物を置いてから、各自好きな方向にさっそく探鳥に出かける。
 十島村立平島へき地診療所  島立神社
 民宿大峰荘 村内の道 
 島は海岸線を残し牧場とリュウキュウチク(竹)に覆われ、ビロウ群落、ガジュマルの古木やヤシの木が点在している。島の道路の大部分は一応舗装されているが、軽自動車がすれ違うことができる幅で、
内に大型車はない。
 島内で見られる鳥は季節により、日によって変わり、特に春と秋の渡りのシーズンには色々な珍しい鳥が羽を休める。島内至る所の笹薮でアカヒゲやウグイスが囀っていたが、ほとんど姿は見せない。しかし道の側溝、空き地、畑には何が居るか分からない。慎重に歩を進めながら島中を歩き廻った。 
 アカハラ  アオバト
キビタキ♂ キビタキ♀
 キビタキやオオルリが島の思わぬ所で見られた。中には長旅で疲れ果てているのか、ササに止まって動かぬ個体もいた。
リュウキュウチクに止まり羽を休めるオオルリ  
    アカヒゲの声があちこちから聞こえてくるが竹藪に阻まれ姿は見えない。集落から2kmほど上がった千年ガジュマルの森だけが、アカヒゲの囀る姿を撮れる唯一の場所で、カメラマンが集中していた。ここでカメラを構えて静かに待っていると、どこからかアカヒゲが出てきて、お気に入りの場所で餌を食べたり囀っていた。都会から来た愛好家は結構虫を持ってきて、ここで与えているらしく、アカヒゲも人慣れしていた。
アカヒゲ ♀ 
アカヒゲ ♂
 ちょっと立ち寄った小学校の小さな広場の芝生で盛んに餌を採る5,6羽の鳥が居た。最初アオジかと思ったがどうも違う。それは珍しいコホオアカだった。
 コホオアカ
  島をあちこちうろうろして大体の様子がわかったが、ともかく坂道ばかりなので重い機材を抱えて歩くのは非常に疲れる。なるべく連れの仲間と一緒に行動しようと思うが、お互い撮影に夢中になると知らぬ間に離れてしまう。しかしそこは小さな島、必ずまた何処かで顔を合わす結果となる。
 午後疲れたので宿に戻り休息していると、「山道にヨタカがいる」という情報が入った。「今頃から行っても間に合わないだろう」というと、「道端で休んでいるから絶対に間に合う」という。ともかくカメラを持って駆けつけると、何とコンクリート敷の山道の端にじっと目をつむって休んでいるヨタカがいるではないか。少しずつ近づいたが、全く知らぬふりで目をつむってじっとうずくまっている。1mぐらいまで近づいても知らぬ顔、長旅で余程疲れているようだ。時々薄目を開けて見ているようだが全く動く気配はなかった。
    こうして一日があっという間に過ぎた。宿にも風呂はあるが、近くの冷泉を沸かした村営温泉(1回200円)へ行き、ゆっくり体を休めた。
23日(日)
  この日はアカヒゲはひと先ずおいて、他の鳥を探すことにした。早朝から宿を中心にあちこち探鳥をしたが、この日は鳥が抜けたのかほとんど姿が見られず、ヨタカもすでに居なかった。こうした離れ小島では、渡り鳥ががやって来た日は色々な鳥が見られるが、天候が良いと固有種以外は他の島へ飛び去ってしまい、ほとんど鳥が見られなくなる。宿の周辺でアカハラ、キビタキ♂♀が見られたに過ぎなかった。
アカハラ 
キビタキ♂                    ♀ 
 山道を登ってゆくと、数羽の鳥が飛んできて一瞬近くの木へ止まった。直ぐに飛び去ってしまったが、後で写真を拡大してみるとサンショウクイであった。
 午後から宿の車を借り、島の見学をした。と言っても15分も走れば道がなくなる小さな島。来るまで走ると道端から何度か鳥が飛び立ったが、種類はわからなかった。
 大浦展望台
島裏にある東の浜港(風の向きで使い分ける)
 南側岩礁  諏訪之瀬島?
  そこで海岸まで下り観察をすることにした。島の周囲の磯は、結構興味深い探鳥の場であり、普通は居ないキビタキや珍しい鳥が、岩陰や乾燥した海藻の上で羽を休めていることがあるという。
 生憎この日はイソヒヨドリなどがいたぐらいで、さしたる収穫もなくほぼ諦めていた居たが、遠くのテトラの上に止まるイソヒヨドリと思われた鳥を拡大してみると、姿はイソヒヨドリだが全身が青い
急いで写真を撮ったが余り遠すぎ良い写真が撮れない。鳥はすぐに飛び去った。初めて見た鳥だったが、後で本で調べると、亜種アオハライソヒヨドリという珍しい鳥だと思われた。その後随分探したが、再度見ることはできなかった。さらに近辺の海岸をくまなく探したが鳥の姿はなかく、この日は終了した。
アオハライソヒヨドリ
 24日(月)
    島の鳥は日により、来るもの去ってゆくものがあり非常に様子が変わる。この日は早朝から宿の周辺でも海辺でも、色々な鳥が見られ楽しかった。
 先ず起き抜けに、宿の近くの家の庭に咲くブラシの木の花の蜜目当てに、シベリアムクドリやヒヨドリが集まっていた。
 
 シベリアムクドリ
 ヒヨドリ
 この日も午前中は主として村落周辺と、山腹にあるアカヒゲポイントに向かい、その後コースを変えて島を巡った。アカヒゲポイントに向かう途中、路肩にはキビタキやビンズイ、畑や運動場周辺ではルリビタキやアカハラが見られた。ヤツガシラの姿は認めたが写真に撮れなかった。離れ小島の探鳥は思わぬ所で、思わぬ鳥と出会える楽しさがある。今日は朝から何か沢山の鳥に出会えるような良い雰囲気が感じられた。
 キビタキ ビンズイ 
ルリビタキ アカハラ
  アカヒゲポイントには既に先客が居たが、鳥の姿はなかった。しばらくするとアカヒゲの声が聞こえ始め、それ次第に近づき、ほどなく舞台にアカヒゲの♂がやってきた。残念ながら右脚に調査用のアルミ環が装着されていたが、大きな声で囀ってくれた。
アカヒゲ♂ 
  ここはそこそこにし、他の場所を探鳥しながら宿への道を下った。10時ごろから、宿よりやや下がった田圃た畑が点在する方面を探鳥した。田圃でセイタカシギが餌を探していた。
セイタカシギ 
  午後、再び車で海岸を探鳥することになった。海岸を詳細に観察していると、何と普通なら林に居るはずのキビタキやオオルリが、岩や流れ着いた海藻の上で羽を休ませている。
 キビタキ オオルリ♀ 
 さらに、普通なら公園や林にいるはずの ツグミ、アカハラ、マミチャジナイも、海岸の石の上で休んでいた。 恐らく彼らは、今しがた長い海上の旅を終え、この島にたどり着いたに違いない。 
 潮溜まりではチュウシャクシギが元気に餌を探していた。  
 ツグミ マミチャジナイ 
 アカハラ  チュウシャクシギ 
 この後、一旦宿に帰り夕方まで近辺を再度探鳥した。宿近くの畑でダイサギが餌を漁っていた。
ダイサギ
   学校の運動場の端でアカハラに似た鳥を撮影したが、写真をよく見ると喉の下の白い部分に黒い縦斑が入っておりカラアカハラではないかと思われた。
カラアカハラ 
 さらに運動場の端の木の枝には、クロツグミとオオルリ♀と思われる鳥が羽を休めていた。
オオルリ♀(左上)とクロツグミ(中央) 
  帰路、 山の稜線の茂みで騒ぐカラスの声に不審を持ち望遠で覗いてみると、木の茂みの枝に確かにタカが止まっていたが、種類は解らなかった。
 タカ(サシバ?)(左)とカラス(右)
  かくして24日は終わったが、早朝から結構楽しめた一日だった。
 25日(火)
 今日は平島最後の日。早朝からいろいろな鳥が現れてくれた。朝食前に宿の周辺を探ると、田圃に向かうやや下り坂の路傍の岩にオオルリ♀が止まっていた。 田圃にはセイタカシギが餌を食み、山道を曲がると野生の羊が驚いて逃げて行った。宿に帰って来るとブラシの花の蜜を狙って、ヒヨドリ、コムクドリが騒いでおり、電線にはツバメも止まっていた。
 オオルリ♀  セイタカシギ
島に野生化したヤギ が多い  ツバメ
 ヒヨドリ コムクドリ 
 朝食後、何時もの通リ宿の周辺を観察後、運動場へ向かった。今日はヤツガシラがあちこちで見かけられた。中には非常にフレンドリーなものもいて、静かに観察していると5,6mぐらいまで接近しても平気な個体も居る。
あちこち餌を探す  虫を捕まえた 
 大きな口をパッと開け喉へ放り込む そのままゴックン 
 ヤツガシラを堪能してから運動場の方へ向かった。 運動場ではアカハラ、カラアカハラ、シロハラがそろって見られた。その他ムクドリも餌を採っていた。
 アカハラ 
カラアカハラ 
 シロハラ 
ムクドリ   ミヤマホオジロ
  運動場からさらにアカヒゲの森に向け坂道を登って行くと、道路脇で餌を拾っていたミヤマホオジロが飛び立って道路わきの木の枝に止まった。さらに進むと道路で餌を漁っていたルリビタキ、アトリが道路脇で餌を食んでいた。道路脇はいろいろな小鳥の餌場なのだ。
 ミヤマホオジロ
ルリビタキ 
 アトリ
 9時半過ぎにやっとアカヒゲポイントに到着。 鳥も人も居なかったが、しばらく待っていると次第に声が近づいてき、いつの間にか彼らのお気に入りの場所に姿があった。
アカヒゲ ♀
 アカヒゲ♂
 昼過ぎ一旦宿に帰り、一休みしてから海岸方面を探鳥した。今日の海岸には小鳥の姿は見られず、わずか数種のシギ類とミサゴが見られた。草原ではダイサギが餌を探していた。
 イソシギ
 ムナグロ?
 キアシシギ
 セイタカシギ
 ミサゴ
 ダイサギ
 26日(水)
  朝から生憎の風雨で、一時は船の到着も危ぶまれたが、 予定の8:30通りには行かなかったが、9時半頃、無事に平島を出港した。途中、かなり風雨が強く船も揺れたが、カツオドリの撮影なども楽しみ、夕方無事鹿児島港へ着いた。かくして平島の探鳥旅行は楽しく無事に終了した。
 平島南の浜港
カツオドリ 
まとめ 
 ボクが2017.4.22〜25日に見た鳥は多分60種を超えると思われるが、その中写真に撮れたのは約40種で、うち9種が初撮りであった。
 全体的に鳥が多く見られるのは集落付近と山道の道端だが、土地が開け、耕した畑や田圃が点在するので、案外餌が豊富なのだろう。しかし見られる鳥は長旅で疲れているものが多く、今一つ生気が感じられなかった。この現象は、渡りの中継所となる他の島でも認められるが、仕方がないことだと思う。ただ自分とすれば、珍しいからと言って、余り疲れた小鳥は撮りたくないと思った。
 さらに大きな問題は、島内に飼い犬はほとんどいないが、多くの家には外猫(一応餌は与えるが自然状態で飼育するネコ)が居り、ネコは避妊もされずどんどん増えているようだ。中には明らかに小鳥を狙っているネコもおり、これらのことから、長旅で疲れ路肩で休んでいる鳥がかなり餌食になっているのではないかと強く疑われた。このまま放置すると野良猫はさらに増える可能性があり、飼育ネコの早急な去勢・避妊術の実施が必要であると思われた。なお、獣医師の居ない孤島に住む猫等の避妊は、行政の計画的に実施が必要と思われた。


 最後に :  平島の探鳥は楽しく無事終了したが、行動を共にしていただい鳥友の長田宣也、宮本一也両氏、とりわけ旅のプラン作成、切符、宿の手配など、全てをお任せした長田氏に深く感謝します。